ファクタリングは債権流動化のひとつ~債権流動化の手法とメリット・デメリット
売掛債権があり、取引先から売掛金の入金を待つ事業者の方は、「債権流動化」により、入金の期日より早期に売掛債権を現金化できる可能性があります。
本記事では、事業の運転資金、つなぎ資金が不足して困っている事業者へ向けて、
「そもそも債権流動化とは、どういった資金調達方法なのか?」
「債権流動化にメリットやデメリットはあるのか」
「債権流動化の手法と特徴、使い所」
「債権流動化の中でファクタリングがオススメの理由」
などについて、詳しく解説を進めていきます。
債権流動化とはどんな資金調達方法?
そもそも「債権流動化」とは、どういった資金調達方法、手続きを指すのでしょうか。
債権流動化により「信用取引」での入金までの期間に資金を調達できる
日本の会社間の取引では、商品やサービスを先に提供し、商品やサービスの対価のお金を約束の期日に支払う「信用取引」である場合がほとんどです。
信用取引の場合、商品やサービスを提供してから、入金までに日数がかかる(例:末締め翌月末払いなど)ため、入金までにタイムラグが発生します。
小規模な事業を経営していて、少ない現金でやりくりしている中小企業や個人事業主の方の中には、取引先から売掛金が入金されるまでの期間、「運転資金が足りない」、「つなぎ資金がない」など、資金不足に陥ってしまう方も少なくありません。
債権流動化とは、入金待ちの売掛債権を現金化すること
入金までの期間中に、売掛債権を利用(=売却または担保)して早期に資金調達する方法を『債権流動化』と呼びます。
取引先から入金待ちの状態で、一時的な運転資金不足に困っている事業者の方は、債権流動化によりキャッシュフローを改善できるため、実際に多くの事業者が様々な種類の「債権流動化」による資金調達を行なっています。
次の項目では、債権流動化のメリットやデメリットなどについて、詳しく解説します。
債権流動化のメリット・デメリット
まず、債権流動化のメリットとなるポイントから紹介します。
債権流動化のメリット
- キャッシュフローの改善(売掛金の早期調達)
- 資産を現金化するため「損失のリスク」を小さく抑えられる
キャッシュフローの改善(売掛金の早期調達)
債権流動化による入金待ちの売掛金の早期調達により、「キャッシュフロー(現金の流れ)」を改善できるという大きなメリットがあります。また、債権流動化を行う事業者のほとんどの方は、「キャッシュフロー改善のため」に利用しています。
債権流動化を行えば、売掛金が入金されるまでの期間に資金を調達できるため、資金不足による倒産の危機を回避できるでしょう。
資産を現金化するため「損失のリスク」を小さく抑えられる
また、債権流動化とは「会社の資産を現金化する」ため、(債権を譲渡してしまえば)損失を出してしまうリスクを最小限に抑えられる、という点もメリットと言えるポイントです。
債権流動化のデメリット
続いて、債権流動化のデメリットとなるポイントについて確認しましょう。
- 売掛金よりも資金調達額が少額(70%~90%ほど)になる
- 債権流動化が取引先に通知される(バレる)ケースもある
売掛金よりも資金調達額が少額(70%~90%ほど)になる
後の項目で詳しく解説しますが、債権流動化を使う場合、売掛金の100%のお金の調達はできません。
債権を買い取ってもらったり、債権を担保に入れて融資してもらう場合は、売掛金の70%~90%ほどのお金しか調達できない点に気をつけておきましょう。
債権流動化が取引先に通知されるケースもある
また、債権流動化のサービスによっては、売掛債権の譲渡などが売掛先の会社にバレる(売掛債権譲渡の通知が行われる)ケースもあるので注意しておきましょう。
債権流動化の3つの手法
債権流動化のサービスは、大きく3つの手法があります。
- ファクタリング(売掛債権買取)
- 売掛債権担保融資(ABL)
- 売掛債権証券化
ファクタリング(売掛債権買取)
売掛債権をファクタリング会社に売却・譲渡し、現金化することを「ファクタリング」と言います。
ファクタリング会社により、売掛債権の買取価格は様々ですが、売掛金のおよそ80%~99%(=手数料1%~20%ほど)で買い取ってもらえるケースが多いです。
ファクタリングの種類~2社間ファクタリングとは?
ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と、「3社間ファクタリング」があります。
2社間ファクタリングとは、「ファクタリング会社」と「申込者の会社」の2社間で行われる取引で、売掛先に債権譲渡の通知がされないというメリットがある反面、ファクタリング手数料が高い(10%~20%ほど)傾向があります。
3社間ファクタリングの特徴
一方の3社間ファクタリングの場合、「ファクタリング会社」、「申込者の会社」、「売掛先の会社」の3社間で取引が行われます。
売掛先に債権譲渡が通知されるデメリットがありますが、ファクタリング会社は売掛債権未回収のリスクが低いため、手数料が低額に(1%~5%ほど)設定されるケースが多いです。
売掛債権担保融資(ABL)
続いて、売掛債権担保融資(ABL)について、紹介します。売掛債権担保融資は、英語で「Asset-based Lending」と呼ばれることから、略して「ABL」と略される場合もあります。
この売掛債権担保融資とは、その名称の通り、未入金の「売掛債権」を「担保」に入れて、銀行などからお金を借りる資金調達の方法を指します。
また、売掛債権を担保とするため、銀行側は貸付金未回収となるリスクが小さくなるため、低金利で融資を行なってもらえる傾向があります。
売掛債権担保融資は返済義務がある
なお、売掛債権担保融資は「借入」となるため、銀行へ「元金+利息」の返済義務がある点に注意してください。
売掛債権証券化
続いて、売掛債権証券化について紹介します。売掛債権証券化は、ファクタリングや売掛債権担保融資とは少し異なる手法の債権流動化です。
売掛債権証券化とは、売掛債権から生み出されるキャッシュフローを裏付けとして証券を発行して、資金を調達することを言います。具体的には、まず、企業がSPVと呼ばれる事業体に売掛債権を譲渡し、その対価として資金を受け取ります。SPVは売掛債権の信用力をもとに、証券を発行して投資家に販売します。売掛債権流動化とは|経済産業省の資料(PPT)より一部抜粋(http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/ji26.ppt)
売掛債権を持つ事業者は、まずSPVと呼ばれる「特別目的事業体(=債権の証券化や流動化などの目的のためだけの会社)」へ、売掛債権を譲渡します。その後、SPVは証券を発行~投資家へ販売して資金を調達します。
売掛債権証券化は手続きが煩雑になる傾向あり
売掛債権証券化は、ファクタリングのように「他社へ売掛債権を譲渡する」というポイントは同じですが、債権の証券化は仕組みが複雑なため、手続きが煩雑になりやすいというデメリットがあります。
債権流動化でファクタリングがオススメの理由
債権流動化には、「ファクタリング」、「売掛債権担保融資」、「売掛債権証券化」の3つの手法がありましたが、手軽に資金調達したい事業者にオススメしたいのは、「ファクタリング」による資金調達です。
ファクタリングをオススメしたい理由を以下にまとめました。
- ファクタリングは借入ではないため返済の必要がない
- ファクタリング会社に売掛債権を売却した後は売掛金回収の責任がない
- 近年ではクラウドファクタリングなどの手数料が低い(2%~9%)ファクタリングもある
- ファクタリングは資金調達までスピーディー
ファクタリングは借入ではないため返済の必要がない
まず、ファクタリングは借入ではないため、ファクタリングにより調達した資金は、売掛債権担保融資とは異なり、返済する必要がありません。
ファクタリングで資金調達した後は、返済を気にしなくてよいため、事業者の方は、事業の安定化や事業の拡大に集中できるでしょう。
ファクタリング会社に売掛債権を売却した後は売掛金回収の責任がない
また、ファクタリング会社へ売掛債権を売却した後、「売掛金が未回収」となった場合でも、返済義務がないのも、ファクタリングのメリットと言えるポイントです。
売掛金が未回収となった場合は、売掛債権を所有しているファクタリング会社が責任を持つためです。
ただし、売掛先の会社の事業の収益が不安定というような場合は、ファクタリング会社は売掛金未回収のリスクがあるため、そもそもファクタリングの審査に落ちる可能性があるので注意してください。
近年ではクラウドファクタリングなどの手数料が低い(2%~9%)ファクタリングもある
また、近年のファクタリング会社の中には、クラウド上(インターネット上)だけで、手軽に申し込み~入金手続きが完了できる「クラウドファクタリング」などのサービスもあります。
このようなクラウドファクタリングでは、売掛債権の買取をスピーディーにするために、AIを活用した審査なども行われています。AIの活用は審査にかかるコストを圧縮できるため、ファクタリング手数料が低く(2%~9%ほど)、経費を抑えて資金調達が可能です。
ファクタリングは資金調達までスピーディー
ファクタリングは審査~入金までスピーディーで、ファクタリング会社によっては最短24時間以内で資金調達できるサービスもあります。
ファクタリングは「売掛債権担保融資」や「売掛債権証券化」に比べて、資金調達までのスピードが早いため、資金不足に陥っていて、急いでお金が必要な事業者にオススメの資金調達方法です。
債権流動化で資金不足時の資金調達に成功させよう
本記事では、事業の運転資金、つなぎ資金が不足して困っている事業者へ向けて、
「そもそも債権流動化とは、どういった資金調達方法なのか?」
「債権流動化にメリットやデメリットはあるのか」
「債権流動化の手法と特徴、使い所」
「債権流動化の中でファクタリングがオススメの理由」などについて詳しく解説を進めてきました。
売掛債権を手軽に現金化するならファクタリングがオススメ
- 債権流動化とは、入金待ちの売掛債権を現金化する資金調達方法
- 債権流動化により早期の資金調達が可能なためキャッシュフローの改善を図れる
- 債権流動化は会社の資産を早期現金化するため、損失を出すリスクを抑えられる
- 債権流動化は売掛債権の70%~90%ほどのお金にしかならないケースが多い
- 債権流動化が売掛先に通知される(バレる)可能性もある
- 債権流動化にはファクタリング、売掛債権担保融資、売掛債権証券化の3つの手法がある
- ファクタリングは事業者が手軽に債権を現金化できる
- 売掛債権担保融資とは、売掛債権を担保に銀行からお金を借りる資金調達方法
- 売掛債権証券化とは、証券化を行うSPVへ債権を売却する方法
- ファクタリングは返済の義務がない
- クラウドファクタリングには手数料2%~9%のファクタリングサービスもある
売掛金が入金されるまでの期間に事業者が利用できる債権流動化とは、「売掛債権を譲渡、または担保」にして資金調達する方法です。
また、債権流動化には「ファクタリング」「売掛債権担保融資」「売掛債権証券化」の3つの手法があるのですが、手軽にスピーディーに資金調達したい事業者にオススメなのは、「ファクタリング」による資金調達方法でしょう。ファクタリングは売掛債権証券化に比べて手続きが簡単で、売掛債権担保融資とは異なり、ファクタリングで資金調達した後は返済しなくても良いためです。
売掛債権により資金調達をしようと検討している方は、本記事を参考にしながら、ご自身が利用しやすいと思う「債権流動化」で資金調達に成功させてみましょう。