売掛債権担保融資とは?融資の仕組みとファクタリングとの違い
売掛債権の入金を待つ事業者の方は、「売掛債権担保融資(ABL=Asset Based Lending)」という手法により、資金を調達できる可能性があります。
本記事では、「売掛債権担保融資で資金調達できる仕組み」、「売掛債権担保融資とファクタリングの違い」、「売掛債権担保融資のメリットや利用時の注意点」などについて、詳しく解説を進めていきます。
この記事で分かること
売掛債権担保融資の仕組みとは?
売掛債権担保融資とは、英語でAsset Based Lendingと呼ばれているため、略してABLと呼ばれる場合もあります。
まず、この売掛債権担保融資で資金調達する仕組みについて解説します。
売掛債権担保融資とは「売掛債権」で「融資」を受ける方法
日本の企業間での取引の場合、サービスや商品を提供してから1ヶ月〜2ヶ月後(=末締め翌月末払い、末締め翌々月末払い等)に、その代金を受け取る「信用取引」が行われています。
売掛債権担保融資は、支払いサイトで資金調達できる
売掛先からの入金を待つ期間(支払いサイト)は、支払いを受けられる権利である「売掛債権」が発生します。この売掛債権が発生している期間中に、「売掛債権を担保」に入れて「融資」を受けられる金融サービスが、「売掛債権担保融資」です。
売掛債権担保融資とは銀行や信用金庫から提供されている
この売掛債権担保融資は、銀行や信用金庫などから提供されています。
事業用のメインバンクとして利用している銀行や信用金庫が提供する売掛債権担保融資であれば、口座への入出金履歴の詳細を審査・確認してもらいやすいため、売掛債権担保融資の審査が有利になりやすいでしょう。
売掛債権担保融資の金利
売掛債権担保融資は「融資」となるため、利息が発生する点に注意しておきましょう。
売掛債権担保融資の金利は、銀行や信用金庫、売掛債権の金額、売掛先企業の経営状態、利用者の企業の経営状態など、様々な要因により異なりますが、「2%〜6%」ほどの間で設定される場合が多いです。
売掛債権担保融資の借入限度額は?
売掛債権担保融資の上限の借入額は金融業者により異なりますが、2億〜3億円という高額融資に対応しているケースが多いです。
なお、売掛債権の金額以上は借入できず、売掛債権の金額の70%〜90%ほどが借入上限の目安(=かけ目と呼ばれる評価額)となるのですが、数億円単位の高額な借入まで対応しているため、限度額が足りずに困ることはないでしょう。
売掛債権担保融資とファクタリングは何が違う?
売掛債権を活用して現金を調達する方法の中に、ファクタリング(売掛債権買取)と呼ばれる資金調達方法もあります。
ファクタリングは売掛債権の売却
売掛債権担保融資は「融資」により資金調達するのに対し、ファクタリングは「ファクタリング会社へ売掛債権を譲渡・売却」して資金を調達する方法です。
ファクタリングは資金調達のスピードが早い
それぞれのサービスを提供する銀行や金融業者などにより大きく異なりますが、「売掛債権担保融資」の場合は、申し込みから融資まで5〜10営業日ほどです。
一方の「ファクタリング」の場合は、申し込みから入金まで最短24時間〜3営業日ほどである場合が多く、売掛債権担保融資よりもスピーディーな資金調達を期待できるでしょう。
売掛債権担保融資のメリット
つづいて、売掛債権担保融資を利用するときのメリットについて、紹介します。
- キャッシュフローを改善できる
- 返済まで1年ほどの期間がある場合が多い
キャッシュフローを改善できる
売掛債権担保融資で資金調達すれば、事業のキャッシュフローを改善できるでしょう。
売掛金の入金までの運転資金が不足しているという事業者の方は、売掛債権担保融資を活用することで事業の「つなぎ資金」を調達できます。
返済まで1年ほどの期間がある場合が多い
また、売掛債権担保融資の借入後は、銀行により異なりますが、返済期間が1年ほどに設定されている場合が多いです。
売掛債権担保融資は、借入から完済まで1年間の期間があるため、資金調達したお金で事業の立て直しを行い、「経営状態が改善してから全額返済(※一括返済利用時に限ります)」できる可能性もあります。
売掛債権担保融資を使う時に注意したいポイント
つづいて、売掛債権担保融資を利用する時に注意したいポイントについて、解説していきます。
- 融資まで日数がかかる
- 売掛先が倒産した時に大きなリスクがある
- 金融業者によっては売掛先へ売掛債権担保融資を通知する場合もある
融資まで日数がかかる
売掛債権担保融資は、申し込み〜融資実行まで日数がかかる点に注意しておきましょう。
売掛債権の金額や申し込み者の事業の経営状態などにより異なりますが、申し込みから融資が実行されるまでには5〜10営業日ほどの日数がかかる場合が多いです。
売掛先が倒産した時に大きなリスクがある
また、売掛債権担保融資は、「借入」となるため、借入先が倒産した時も返済の義務があります。
売掛債権担保融資を利用中に、売掛先が倒産すると借入を返済できなくなり、事業の経営が悪化するというリスクにも注意しておきましょう。
※通常、売掛債権担保融資の際は、各地域にある信用保証協会の「流動資産担保融資保証制度 」を利用〜0.68%の保証料を支払い、返済できなくなった場合の保証(=融資額の80%ほど)を受けるケースが多いです。
参考リンク:ABLのご案内|東京信用保証協会
金融業者によっては売掛先へ売掛債権担保融資の通知が必要な場合がある
利用する金融業者によっては、売掛先に「売掛債権担保融資の利用の承諾や通知」が必要なケースもあるので、売掛先に売掛債権の利用がバレたくない事業者は気をつけておきましょう。
売掛債権の利用の通知がなくても債権譲渡登記が行われる
また、売掛先に売掛債権担保融資利用の承諾や通知が行われない場合は、金融業者は貸し倒れのリスクを回避するために「債権譲渡登記」(※)を行います。
※債権譲渡登記することで、金融業者は売掛債権が二重に利用された時に売掛債権の所有を法的に主張できます(=売掛債権の未回収のリスクを減らせます)。
債権譲渡登記は法務局で確認できる
債権譲渡登記は売掛先に通知されずに行われる手続きですが、登記情報は法務局に記録されているため、「売掛先が売掛債権担保融資を疑い、登記情報を調べられた場合は債権譲渡の事実がバレてしまう」ので注意が必要です。
こんな時は売掛債権担保融資よりもファクタリングがオススメ
また、以下のようなケースでは、売掛債権担保融資よりも、「ファクタリング」の利用がオススメです。
- スピーディーに資金調達を行いたいとき
- できるだけ簡単な手続きで資金調達したいとき
- 売掛先に債権譲渡の事実がバレたくないとき
スピーディーに資金調達を行いたいとき
資金調達を急いでいる事業者の方は、「ファクタリング」を便利に利用できるでしょう。
また、新しいファクタリングサービスである、クラウドファクタリング(=インターネットだけでファクタリングができるサービス)を利用すれば、24時間以内に審査が完了し、審査完了後には即日入金も期待できます。
今すぐ、つなぎ資金を調達したい事業者は、クラウドファクタリングの利用を検討してみましょう。
できるだけ簡単な手続きで資金調達したいとき
また、できるだけ簡単な手続きで資金調達したい場合も「ファクタリング」の利用がオススメです。
ファクタリングと、売掛債権担保融資利用時に必要な書類について、以下にまとめてみました。
ファクタリング(やクラウドファクタリング) | 売掛債権担保融資 |
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・本人確認書類 ・請求書 ・保有する全ての法人口座の入出金明細 ・昨年度の決算書 ・昨年度の勘定科目内訳明細書 |
・予約申込書 ・本人確認資料 ・個人情報取扱同意書 ・商業登記事項証明書 ・決算書または税務申告書 ・所得証明書等 ・資金繰り表または事業計画書 ・売掛債権を確認する資料(契約書、請求書、売上台帳等) ・申込時必要書類の各原本 ・商業登記事項証明書 ・印鑑証明 ・実印 ・融資金額に応じた収入印紙 |
※契約内容、金融業者などにより、必要書類が異なる場合があります。
上の表から分かるように、売掛債権担保融資よりもファクタリング利用時のほうが、必要書類が少なく済む場合が多いです。
ファクタリングにはインターネットだけで入金まで完結できるサービスもある
また、売掛債権担保融資の場合は、面談を経てから、申し込み〜審査〜窓口での契約〜融資となるケースが多いのですが、クラウドファクタリングの場合は、面談不要で「申し込み〜審査〜入金」まで、インターネット上だけで手続きが完了します(※電話確認がある場合があります)。
売掛先に債権譲渡の事実がバレたくないとき
売掛債権担保融資の場合は、「売掛先に債権譲渡の通知」、または「債権譲渡登記」が必要ですが、ファクタリングは(ファクタリング会社によっては)「債権譲渡の通知や債権譲渡登記が不要」なため、売掛先に売掛債権譲渡の事実がバレることはありません。
売掛債権の利用が売掛先にバレるのは困る…という事業者は、売掛債権担保融資よりも「ファクタリング」がオススメです。
売掛債権担保融資をうまく活用してキャッシュフローを改善しよう
本記事では、「売掛債権担保融資で資金調達できる仕組み」、「売掛債権担保融資とファクタリングの違い」、「売掛債権担保融資のメリットや利用時の注意点」などについて、詳しく解説を進めてきました。
スピーディーに資金調達したい事業者はファクタリングの利用も検討しよう
- 売掛債権担保融資とは、「売掛債権」を「担保」に入れて「融資」を受ける方法
- 売掛債権担保融資は銀行や信用金庫などから提供されている
- 売掛債権担保融資は金利2%〜6%ほど
- 売掛債権担保融資の借入限度額の目安は売掛債権の70%〜90%
- ファクタリングとは売掛債権を売却して資金調達する方法
- ファクタリングは資金調達までのスピードが早い
- 売掛債権担保融資は返済まで1年ほどの期間が設けられている場合が多い
- 売掛債権担保融資は融資まで日数がかかるので注意
- 売掛債権担保融資利用中に売掛先が倒産しても返済しなければならない
- 売掛先に売掛債権担保融資の利用の承諾や通知が必要な場合もある点に注意
- 資金調達を急いでいる事業者はファクタリングを利用する
- ファクタリングは売掛債権担保融資よりもかんたんな手続きで資金調達できる
- クラウドファクタリングはインターネットだけで資金調達を完了できる
売掛債権担保融資とは、売掛債権を担保に入れて融資を受ける方法です。このため、売掛先からの入金待ちの状態になっている事業者の方が利用できます。
また、売掛債権担保融資で借り入れできる限度額の目安は売掛金の70%〜90%ほどとなっています。ただし、売掛債権担保融資への申し込み〜入金までには5〜10営業日ほどの日数がかかるので注意してください。
なお、売掛債権を売却して資金調達するファクタリングの場合は、申し込み〜入金まで24時間ほどで完了できるサービス(=クラウドファクタリング)もあるため、資金調達を急いでいる事業者の方は、売掛債権担保融資だけではなく、ファクタリングの利用も検討してみましょう。