東京都正規雇用等転換安定化支援助成金とは?支給条件と申請方法の流れを解説
厚生労働省が実施する「キャリアアップ助成金」ですが、この中の「正社員化コース」の受給対象となり、東京都に事業所がある中小企業は、「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」により、さらに助成金を受給できる可能性があります。
本記事では、「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の概要」や「申し込み条件」、「申請方法」などについて、詳しく解説を進めていきます。
この記事で分かること
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金とは?
この「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」とは、どういった助成金制度なのでしょうか。
東京都では、パートや契約社員、派遣労働者といった非正規から正規雇用に転換した従業員の方々が安心して働き続けられるよう、計画的な育成計画の策定や退職金制度の整備など、労働環境整備を行った企業に対して助成金を支給します。
出典元:東京都TOKYOはたらくネット
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金とは、上の通り「非正規雇用労働者が正社員として働けるように労働環境の整備を行った企業が受けられる助成金」となっています。
中小企業だけが受給できる助成金
また、この助成金は「中小企業」だけが受給できます。このため、大企業の事業者や個人事業主の方は利用できないので注意してください。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の上限は70万円
この助成金の支給金額は以下のようになっています。
対象労働者数 | 助成額 |
---|---|
1人 | 20万円 |
2人 | 40万円 |
3人以上 | 60万円 |
東京都内で正社員に転換した労働者に対し(※諸条件は次の項目で解説)一人につき20万円(上限60万円)、さらに「退職金制度新規導入」することで10万円が給付され、最大70万円の助成金を受給できます。
次の項目では、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の利用条件について、詳しく解説します。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金への申し込み条件
助成金への申し込み条件
- 中小企業であること
- 東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること
- 平成29年4月1日以降に支給対象労働者を転換等し、東京労働局長がキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定をしていること
- 交付申請日時点で、正社員化コースで転換等した支給対象労働者が在職し、支援可能な状況であること
助成金を利用するには、上の条件を全て満たす必要があります。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金での「中小企業」とは、キャリアアップ助成金の定義に準じます。
- 小売業(飲食店を含む)…資本金や出資の総額が5,000万円以下、または労働者数50人以下
- サービス業…資本金や出資の総額が5,000万円以下、または労働者数100人以下
- 卸売業…資本金や出資の総額が1億円以下、または労働者数100人以下
- その他の業種…資本金や出資の総額が3億円以下、または労働者数300人以下
東京都内に事業所があり、キャリアアップ助成金の「正社員化コース」の支給が決定されている中小企業のみが受給対象となる点に注意してください。
受給対象となる労働者の条件
また、事業所に受給対象となる労働者がいなければ助成金を受け取れません。受給対象となる労働者の条件は以下の通りです。
- 正社員化コースの支給対象となった労働者であること
- 平成29年4月1日以降に都内事務所において転換等された労働者であること
- 3か月間の支援期間終了日において、同一の事業主との間で転換又は直接雇用後の雇用区分の状態が継続し、支援期間の末日において都内事務所に在籍していること
- 支援期間の末日において有期雇用労働者(期間の定めのある労働者をいう)でないこと
助成金給付のために必要な支援事業の実施の内容
また、「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」を受給するには、事業所の条件や労働者の条件を満たした上で、以下の支援事業を行う必要があります。
- 申請事業主は、支給対象労働者に対して、支援期間(3か月間)のうちに支援事業を行うこと
- 支援期間中に以下の①または②いずれかを行うこと
(①新たに退職金制度を整備し、規程を労働基準監督署へ届出する。②新たに独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部部が運営する中小企業退職金共済制度に事業主として加入する
上の「支援事業」とは、以下の3点を指します。
給付金を受け取るために実施が必要な支援
- 3年間の指導育成計画の策定
- 指導育成者(メンター)の選任及びメンターによる3回以上の指導
- 指導育成計画に基づく研修の実施
事業者は3ヶ月の支援期間のうちに、上の3つの支援を行わなければなりません。
なお、指導育成計画に基づいて研修を実施する(実施できなければ給付金の対象外となる)ため、「無理のない指導育成計画」を立てるようにしてください。
申し込み条件のキャリアアップ助成金の正社員化コースとは
ここで、「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」を利用するための条件である、キャリアアップ助成金の正社員化コースについて、簡単に解説します。
キャリアアップ助成金の正社員化コースとは
キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは、策定したキャリアアップ計画書通りに取り組みを行う等の条件を満たし、「有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換または直接雇用した場合」に助成金が支給される制度です。
正社員化コースは最大1,440万円が支給される
また、キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、1名につき28万5,000円〜72万円(※中小企業の場合)、20名までが対象となるため、最大1,440万円の助成金を受給できる可能性があります。
このため、キャリアアップ助成金「正社員化コース」と「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」の受給対象となれば、最大で1,510万円の助成金の受給を期待できるでしょう。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の申請方法
続いて、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金への申請方法について、解説します。
- キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給決定通知書受領
- 事業実施計画書兼交付申請書提出
- 事業実施計画書等の審査
- 交付決定通知
- 3ヶ月間の支援期間
- 実績報告書提出
- 支援期間実績の審査
- 助成金の振込
参考リンク:東京都正規雇用等転換安定化支援助成金のご案内
上の手続きの流れについて確認していきましょう。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給決定通知書受領
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、キャリアアップ助成金の受給対象となる事業者しか利用できません。
事業実施計画書兼交付申請書提出
キャリアアップ助成金の受給決定通知書を受領した後、作成した「事業実施計画書」と「交付申請書」を、東京都正規雇用化推進窓口へ提出します。
事業実施計画書等の審査
東京都正規雇用化推進窓口へ提出が完了した後、書類や事業実施計画書の内容に不備がないか審査が行われます。
交付決定通知
提出書類に不備がなければ、「交付決定通知」が出されます。ただし、この時点では助成金の給付額は決定されていません。
3ヶ月間の支援期間
交付決定通知を受領したあと、3ヶ月間の「支援期間」があります。この支援期間では、「1ヶ月以内に3年間の指導育成計画の策定」を行い、「メンターの選出、メンターによる指導(3回以上)」、「指導育成計画に基づく研修の実施(1回・2時間以上)」が必要です。
実績報告書提出
3ヶ月間の支援期間が終われば、決められた期間内に「実績報告書」を提出します。
支援期間実績の審査
実績報告書に基づいて、正しく指導育成計画が実施されたかどうかの「審査」が行われます。
助成金の振込
審査に通過すれば、指定銀行口座へ助成金が振り込まれます。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金のよくある質問
さいごに、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金に関するよくある質問について、確認しておきましょう。
- キャリアアップ助成金を大企業で受給した場合は?
- キャリアアップ助成金の支給対象が3名を超えた場合、来年度に繰り越して申請できる?
- 申請期間を過ぎてしまったが、申請を受理してもらえる?
キャリアアップ助成金を大企業で受給した場合は?
「中小企業としてキャリアアップ助成金へ申請したけれど、大企業と認定されてキャリアアップ助成金を受給した」というような場合、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金を利用できるのでしょうか。
大企業は受給対象外
大企業としてキャリアアップ助成金を受給した場合は、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の対象外となり、申し込みできません。
ただし、大企業としてキャリアアップ助成金へ申請したものの、中小企業として認定されて助成金を受給した場合は、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の受給対象となります。
キャリアアップ助成金の支給対象が3名を超えた場合、来年度に繰り越して申請できる?
キャリアアップ助成金で対象労働者が6名の場合、今年度と来年度へ分けて申請できるのでしょうか。
来年度へ繰り越し申請はできない
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の上限人数は「3名」となっていて、この人数を超えて申請はできません。また、受給対象者を翌年へ繰り越して申請するということも認められていないので注意してください。
申請期間を過ぎてしまったが、申請を受理してもらえる?
申請期間を少しだけ過ぎてしまった場合は、申請を受理してもらえるのでしょうか。
申請期間外の申請書は受理されない
申請期間に1日でも遅れてしまった、または、申請期間より早く提出してしまった、という場合は書類が受理されませんので、必ず申請期間内に申請書を提出するようにしてください。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は最大70万円受給できる可能性がある
本記事では、「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の概要」や「申し込み条件」、「申請方法」などについて、詳しく解説を進めてきました。
キャリアアップ助成金の受給者は東京都正規雇用等転換安定化支援助成金への申請を検討しよう
- 東京都正規雇用等転換安定化支援助成金とは労働環境整備を行った企業が受給できる
- 中小企業しか東京都正規雇用等転換安定化支援助成金を受給できない
- 最大70万円の支給額がある
- 東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の受給には3年間の指導育成計画の策定が必須
- キャリアアップ助成金の正社員化コースは最大1,440万円の受給がある
- 大企業としてキャリアアップ助成金を受給した事業は東京都正規雇用等転換安定化支援助成金を利用できない
- 受給対象者を来年度へ繰り越しして申請できない
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金とは、「キャリアアップ助成金」の受給対象者が利用できる助成金制度です。また、この制度は1人につき20万円、3名まで受給対象となり最大60万円、さらに退職金制度新規導入により10万円(合計70万円)の受給が期待できます。
なお、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、年に6回の申請期間が設けられていて、1回の申請期間につき最大の予定事業所数は500事業所となっています。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は書類準備と支援事業の実施さえ行えば、受給は難しくありませんので、キャリアアップ助成金を受給した中小企業の事業者は、ぜひ本記事を参考にしながら、助成金の申請を進めてみましょう。