ファクタリングとは違う手形割引で資金調達する4つのメリット・2つのデメリットを解説
「ファクタリング」も「手形割引(てがたわりびき)」も、入金待ちになっているお金を支払い期日前に現金化し資金調達する方法ですが、ファクタリングと手形割引とでは手続きの仕組みが異なっています。
そこで本記事では、「ファクタリングと手形割引の違い」を中心に、「そもそも手形とは?」、「手形割引で資金調達する仕組み」、「手形割引のメリットとデメリット」、「ファクタリング、手形割引の活用ポイント」などについて、詳しく解説を進めていきます。
この記事で分かること
そもそも手形って何?
事業の経営者や、個人事業主の中には、「手形を利用したことがない」、「そもそも手形とはどういったものか分からない…」という方もいるのではないでしょうか。
手形とは
手形とは、主に商取引において使用される有価証券のことを指します。
手形の振出人(発行者)が、受取人またはその指図人に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する形式の有価証券のことである。日本国内で流通する手形のほぼすべてが約束手形である。
出典元:手形|ウィキペディア
日本国内で流通している手形のほとんどが「約束手形」となっていて、会社間の支払い時、「現金」の代わりに「手形」が利用される場合があります。
通常、日本の商取引では、商品と現金とを同じタイミングで取引せず、
商品やサービスの提供
↓
請求書の発行
↓
期日までに料金の支払い
というように、商品の提供〜支払いまでにタイムラグが発生する「信用取引」が行われています。
手形は「一定の期日に金額を支払う」という意味では売掛債権が発生する信用取引と同じですが、手形の入金までの流れは以下のようになります。
手形発行〜入金までの手続きの流れ
- 商品やサービスを取引先へ提供する
- 振出人(取引先)は手形を受取人(利用者)へ発行
- 受取人が取引銀行へ手形換金の依頼
- 取引銀行が振出人の取引銀行と手形交換
- 振出人の取引銀行が振出人の当座預金口座から手形金額の引き落とし
- 振出人の取引銀行から受取人の銀行へ送金
- 受取人の銀行から受取人の当座預金口座へ入金
信用取引では「末締め翌々月末払い」など、支払い期日まで最長60日(=下請代金支払遅延等防止法第2条の2)となりますが、手形を利用すると、支払い期日を120日間や1年間など、長い期間を指定できるのが特徴です。
なお、手形を発行する側を「振出人」、手形の発行を受ける側を「受取人」、手形の代金の入金までの期間を「手形サイト」と呼びます。
手形の発行=振出人の資金繰りの改善に役立つ
手形は、支払い側(=商品・サービスを受ける側)が支払い期日を伸ばせるという点において、「振出人は資金繰りを改善させやすい」というメリットがあります。
しかし、手形の支払い期日に間に合わなかった場合は「不渡り」となり、半年間で2度の不渡りを出してしまうと2年間の銀行取引停止、上場企業は上場廃止の処分が下され、倒産に追い込まれる可能性が非常に高いという点に注意しておかなくてはなりません。
手形割引で資金調達する仕組み
続いて、手形を利用して「資金調達」する仕組みについて解説します。通常、商取引時に手形が振り出された場合、手形の支払い期日まで現金を調達できません。
手形は支払い期日まで代金を受け取れない
また、手形の支払い期日は、120日間以上に設定されているケースが多く、信用取引よりも代金を受け取るまで長期間となる場合がほとんどです。
運転資金が潤沢にあるという事業者は、手形の支払いまでの期間、資金不足に悩まされることもないでしょう。
しかし、少ない運転資金で事業を運営している事業者は、手形サイトで運転資金が不足してしまい事業の継続が困難になる、というケースも考えられます。
手形割引は手形サイトで資金調達できる方法
手形の代金の入金までのお金が足りない…というような事業者のために、手形の支払い日前に手形を現金化する「手形割引」という金融サービスが生まれました。
手形割引の手続きの流れ
手形割引の手続きの流れを確認しながら、手形割引の資金調達の仕組みを把握しておきましょう。
手形割引での入金までの手続きの流れ
- 商品やサービスを取引先へ提供する
- 取引先は手形を受取人(利用者)へ発行
- 受取人が取引銀行へ手形割引依頼
- 取引銀行が受取人へ支払い
- 銀行と手形割引業者が手形交換所で手形交換
- 振出人の取引銀行が振出人の当座預金口座から手形金額の引き落とし
- 振出人の取引銀行から手形割引業者へ支払い
手形割引での資金調達は、このような手続きの流れとなっていて、手形割引への申し込みから資金調達まで、3営業日〜7営業日ほどかかる場合が多いです。
手形割引とファクタリングの違い
続いて、手形割引とファクタリングとの違いを確認していきます。手形割引とファクタリングは、どちらも「入金待ちの代金を早期に現金化・調達する」という金融サービスです。
ファクタリングは「売掛債権」を支払い前に現金化する仕組み
手形割引は「手形」の代金の入金前に現金化する仕組みでしたが、ファクタリングは「売掛債権(売掛金)」の入金前に現金化する仕組みとなっています。
また、ファクタリング利用時には、「ファクタリング専門の会社」へ申し込みを行い、手続きを進めていきます。
手形割引には遡及義務がある
また、手形割引とファクタリングとでは、「遡及義務(さっきゅうぎむ)」にも違いがあります。
遡及義務とは、手形割引をした後、振出人(取引先)が倒産して手形の支払いが困難になった場合、手形の受取人は手形割引業者へ対して、その代金の支払い義務が生じることを言います。
ファクタリングには遡及義務がない
一方のファクタリングでは、売掛債権をファクタリング会社へ譲渡した後、売掛先が倒産しても基本的に利用者が売掛金を回収する責任はありません。
手形割引のメリット・デメリット
手形割引利用時のメリットとデメリットを解説します。
手形割引利用時のメリット
- 支払いを待つことなく資金調達できる
- 銀行または貸金業者の登録がある会社と取引できる
- 手形割引は手数料が低い傾向あり
- 銀行融資ほど審査難易度は高くない
支払いを待つことなく資金調達できる
手形割引の最も大きなメリットは、「手形の入金日を待つことなく、資金調達できる」という点でしょう。手形の支払い期日は120日という場合が多いのですが、取引先が大手企業などの場合は180日や360日というような長期間の手形サイトが設けられている場合もあります。
手形割引を利用すれば入金を待つ必要がなく、早期で手形を現金化できる、というメリットがあります。
銀行または貸金業者の登録がある会社と取引できる
また、手形割引は「融資」の一種として扱われているため、金融庁に登録がある銀行や貸金業者しか扱えない金融サービスです。
手形割引の利用時には、国に認められた銀行や金融業者と取引することになるため、利用時に「安心感」を得られるでしょう。
手形割引は手数料が低い傾向あり
一般的に、手形割引は手数料が低い傾向があります。
金融業者 | 手形割引の手数料 |
---|---|
メガバンク | 1.5%〜3.5% |
地方銀行 | 2.0%〜4.0% |
信用金庫 | 3.0%〜4.5% |
信用組合 | 3.5%〜5.0% |
手形割引業者 | 3.0%〜20.0% |
※手形割引の目安(金融業者により異なります。)
また、手形割引は「融資」としての扱いとなるため、出資法の適用から「20.0%(10万円未満の場合)」より手数料(金利)が高くなることはありません。
銀行融資ほど審査難易度は高くない
手形割引は「融資」の一種ですが、銀行や日本政策金融公庫からの融資に比べて審査難易度が緩やかである傾向があります。
銀行融資の審査に落ちてしまった事業者の方でも、「手形割引」なら利用できる可能性があります。
手形割引利用時のデメリット
- 手形割引の手数料がかかる
- 手形がないと利用できない
続いて、手形割引のデメリットとなるポイントを紹介します。
手形割引の手数料がかかる
手形割引を利用すると、銀行や信用金庫、手形割引業者へ手数料の支払いが発生します。このため、手形の支払い期限を待って受け取る金額よりも少なくなってしまう点に注意してください。
手形がないと利用できない
また、手形割引は「手形」がなければ利用できません。取引先から請求書や納品書などしか発行されていない場合は、手形割引ではなく「ファクタリング」を利用しましょう。
こんな時はファクタリング・手形割引どちらを使う?
どのような時に「手形割引」、「ファクタリング」が使いやすいのでしょうか。手形割引、ファクタリングの利用をオススメしたいタイミングについて紹介します。
- 少しでも手数料を抑えて資金調達したい場合は?
- よりスピーディーに資金調達したい場合は?
- バランスシートを改善したい場合は?
少しでも手数料を抑えて資金調達したい場合は?
少しでも手数料を抑えて資金調達したい方は、「手形割引」の利用を検討してみましょう。
銀行の手形割引なら手数料1.5%〜3.5%ほど
ファクタリングの手数料は1%〜30%ほどに設定されていますが、銀行の手形割引であれば、手数料1.5%〜3.5%ほどと非常に低く設定されています。
クラウドファクタリングなら手数料2%も目指せる
ただし、インターネットだけで申し込み〜入金までの手続きを完結できるクラウドファクタリングであれば、手数料2%〜9%となっているため、ファクタリングで手数料を抑えたい方は「クラウドファクタリング」への申し込みを検討してください。
よりスピーディーに資金調達したい場合は?
また、資金調達を急ぐ事業者の方は、手形割引かファクタリング、どちらの資金調達方法がオススメなのでしょうか。
ファクタリングの方が資金調達までのスピードがやや早い
手形割引は資金調達まで3営業日〜7営業日ほどかかるのに対し、ファクタリングの場合は1営業日〜5営業日ほどとなっています。少しでも資金調達を急ぎたいという方は、「ファクタリング」を利用するようにしましょう。
バランスシートを改善したい場合は?
貸借対照表(バランスシート)を改善したい事業者は、「ファクタリング」の利用がオススメです。
手形割引は「貸借対照表」への記載が必要
手形割引を利用すると、貸借対照表に「受取手形割引額」を注記しなくてはなりません。手形割引は法的に認められている資金調達方法ですが、何度も手形割引をしていると、「資金繰りに困っている会社」として判断されて、銀行融資などの審査が不利になる可能性があります。
ファクタリングは企業価値を高められる可能性がある
ファクタリングを利用した場合、「貸借対照表」に売掛債権の譲渡・売却を記載する必要はありません。
また、ファクタリング利用後には、売掛債権を資産の部から外す(=オフバランス化)ことで、貸借対照表の総資産額が減ります。総資産額が減少することにより、総資産利益率(ROA)が高まる=少ない資金で利益を上げていると判断されるため、ファクタリングを利用することで企業価値が高まり、銀行融資などの審査が有利になる可能性があります。
資金繰りに困っている事業者は手形割引を利用しよう
本記事では、「ファクタリングと手形割引の違い」を中心に、「そもそも手形とは?」、「手形割引で資金調達する仕組み」、「手形割引のメリットとデメリット」、「ファクタリング、手形割引の活用ポイント」などについて、詳しく解説を進めてきました。
手軽に資金調達したいならファクタリングもオススメ
- 手形とは商取引において使用される有価証券のこと
- 国内で流通する手形のほとんどが「約束手形」
- 手形サイトまでに手形を現金化する仕組みが手形割引
- ファクタリングは売掛債権を現金化する金融サービス
- 手形割引には遡及義務があるがファクタリングには無い
- 手形割引は融資の一種なので国に認められた金融業者しかサービスを提供できない
- 手形割引は手数料が低い傾向あり
- ファクタリングは融資までのスピードが早い
手形とは、商取引で使用される有価証券のことで、国内で流通するほとんどが「約束手形」となっています。また、この手形の支払い期日までに手形を現金化する金融サービスを「手形割引」と言います。
手形割引とファクタリングは似た金融サービスですが、手形割引は「手形を現金化する方法」、ファクタリングは「売掛債権を現金化する方法」です。また、手形割引は手数料が低い傾向がありますが、手形割引後に取引先が倒産すれば、受取人は代金の支払い義務が生じる点に注意してください。
ファクタリングの場合は、売掛先が倒産した後でも売掛金の支払い義務はありません。現金化した後に取引先の倒産の責任を負いたくないという方で、手形割引とファクタリングどちらでも利用できる場合は、「ファクタリング」を利用するようにしましょう。